海原へ入っていった神武天皇の兄
どんな神さま?
初代・神武天皇の兄にあたる神さまです。鵜葺草葺不合命と玉依毘売のあいだに生まれた四人きょうだいの二番目で、兄は五瀬命、弟は御毛沼命と、のちの神武天皇です。
『古事記』がこの神について語るのは、たったひとことです。「亡き母の国として、海原にお入りになった」。母の玉依毘売は、海の神の娘でした。祖母の豊玉毘売も海の国の人です。稲氷命は、母や祖母のふるさとである海の世界へ、ひとり去っていったのです。弟の御毛沼命も、波の上をふんで、海のかなたの常世の国へ渡ったと記されています。
『日本書紀』は、もう少しくわしく語ります。東へ向かう旅のとちゅう、熊野の海で船があらしにあいました。稲氷命は「私の祖先は天の神、母は海の神なのに、なぜ陸でも海でも苦しめられるのか」となげき、剣を抜いて海にとびこみ、神になったといいます。四人きょうだいのうち三人は、旅のとちゅうで命を落としたり、海へ去ったりして、大和にたどりついたのは末の弟ひとりでした。名前に「稲」の字をもつ兄は、海へかえっていきました。国のはじまりのかげにある、別れの物語です。
登場する主な神話
- 神武天皇の系譜
解説:記紀の記述と神社の伝承を書き分けています。(日本の神さま365編集部)
基本情報
- 見出し表記
- 稲氷命
- 読み
- いなひのみこと
- 区分
- 記紀の神
- 主な出典
- 古事記
- 図鑑番号
- K00071
