道で追いついた伊耶那美命の別名
どんな神さま?
黄泉の国の女神となった、伊耶那美神のもうひとつの名前です。亡くなった妻をつれもどしに来た伊耶那岐神は、「見ないで」という約束をやぶって、妻のかわりはてた姿を見てしまい、逃げ出しました。「私にはじをかかせましたね」。怒った伊耶那美神は、まず黄泉の国の女たちに追わせ、次に八柱の雷神と千五百の軍勢に追わせます。
それでもつかまらないとわかると、最後には伊耶那美神みずからが追いかけてきました。そして、黄泉比良坂で、とうとう夫に追いつきます。『古事記』は、こう記しています。「伊耶那美神を、黄泉津大神という。また、道で追いついたので、道敷大神という」。「しき」は、「追いつく」という意味の古い言葉「及く」をあらわしています。「道で追いついた大神」という名前です。
けれども、夫はすでに大岩で坂をふさいでいました。追いついたのに、もうふれることはできません。ふたりは岩をはさんで、最後の言葉をかわしました。国を生み、神々を生んだ夫婦の、永遠の別れです。追いつきたい。もういちど会いたい。その思いの強さが、この名前にはこめられているようにも読めます。おそろしい死の国の神の名前ですが、その底には、深い悲しみと、たち切れない愛情があります。別れのつらさを知る、すべての人の心にひびく名前です。
登場する主な神話
- 黄泉比良坂
解説:記紀の記述と神社の伝承を書き分けています。(日本の神さま365編集部)
基本情報
- 見出し表記
- 道敷大神
- 読み
- ちしきのおおかみ
- 区分
- 記紀の神
- 主な出典
- 古事記
- 図鑑番号
- K00207
